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ロード・オブ・ウォー

MOVIE 2017.12.4

ロード・オブ・ウォー

Lord of War|アメリカ映画(2005)
監督:アンドリュー・ニコル
出演:ニコラス・ケイジ、ジャレッド・レト、イーサン・ホーク

争いが起きることで儲かる皮肉さ

イスラム国と自称するイスラーム過激派集団ISILが引き起こす悪事によって、各国で起こっている紛争やテロ。連日報道されている北朝鮮からのミサイル発射実験により緊迫する米朝間。過去をさかのぼれば、第一次世界大戦や第二次世界大戦をはじめとした大きな戦争によって、世界中でこれまでたくさんの命が失われてきました。そんな悲しい出来事の裏側には、必ず、争いに必要となる武器を売り、巨額の富を手にしていた武器商人たちがいました。今回ご紹介する「Lord of War(ロード・オブ・ウォー)」は、複数の武器商人への取材をもとに作られたノンフィクションに基づくフィクション映画。「史上最強の武器商人」と呼ばれた男の物語です。ニコラス・ケイジ演じる主人公ユーリ・オルロフが、「今、世界には5億5千万丁の銃がある。ざっと12人に1丁の計算だ」という、衝撃的な数字を告げるところから始まるストーリー。ユーリは、アメリカ陸軍将校との裏取引で手にした大量の銃(M16)を売却し、弟と二人で世界中のさまざまな相手に銃器を販売し派手な生活を送っていきます。彼は武器商人として、「1.自分の商品では撃たれないこと。2.常に支払いの確保をしておくこと。3.自ら銃を持って顧客に加勢しないこと。4.戦争をしないこと。特に、自分自身とは。」と4つの掟を定めていました。冷戦が終結し、ソビエト連邦が崩壊することでもひと儲けし、紛争が続くアフリカ諸国でもまたひと儲け。それによって得た富で何不自由のない生活を送っている妻と子は、彼が武器商人であることを知りません。どこかの国と、どこかの国が争っている現実の裏側では、その戦いの為に武器を売り、巨額の富を築き上げた武器商人たちがいるのです。そして彼らは、家族を持ち暮らしています。この物語では、インターポールの捜査官によって悪事が家族にばれ、愛する妻と子は去っていきましたが、世の中の武器商人たちの中には、今も家族に正体を暴かれることなく幸せに過ごしている人もいるでしょう。戦争という悲劇に加担することで得る幸せ。しかし何かしらのかたちでしっぺ返しはやってきます。商売にはさまざまな形がありますが、堅実に働いてこそ、本当の幸せもやってくるんでしょうね。