1. ホーム
  2. アート
  3. シネマ気分

それから

MOVIE 2018.3.19

それから

日本映画(1985年)
監督:森田芳光
出演:松田優作、藤谷美和子、小林薫

明治の文豪・夏目漱石の名作を新感覚で映画化

幼い頃や若い頃に観た映画を歳を重ねてから再び観てみると、また違った観方ができるようになっていたり、より深くわかるようになっていたりしませんか? さまざまな人生経験をしてきた事によって観る側も成長して、より様々な感じ方ができるようになったのだと思います。私にとって「それから」がその1本です。夏目漱石原作の小説「それから」の映画化作品です。裕福な家庭に育った主人公の長井代助は、職に就かず家族の援助で暮らす、現代でいうところのニート生活を送っています。そんな代助の元に、失業した旧友・平岡が久々に訪ねて来ますが、何を隠そう平岡の奥さん三千代は、代助が学生時代に片思いしていた相手なのです。そして三千代もまた…。再会した三千代の幸せとはいえない姿を見てしまい、恋心が再燃してしまう代助なのでした。その辺の心のひだが若い頃よりも肌で分かるようになった気がします。劇中には「寂しくっていけないから、また来て頂戴」「しようがない、覚悟を決めましょう」など、原作そのままのセリフを使っていて、そのせいか明治文学を読んでいるような感覚を味わえます。監督の森田芳光は象徴的なイメージカットをよく使いますが、有名なのは映画「家族ゲーム」(1983年)での、家族が横一列に並んで食事するシーンです。この作品でも象徴的なイメージカットが多いです。毎回、代助が乗る路面電車のシーンがそれで、乗客が次々と手持ち花火をしたり、何人もの代助らしい後ろ姿が満月を眺めていたりと、マグリットの絵画のようなシュールさを感じるシーンです。また、この作品には頻繁にガラスが登場するのですが、それは何を表現してるんでしょうか。壊れやすい儚さなのか、目に見えないけど存在する透明感なのか。でも、イメージを最も伝えているのは、秀逸なテーマソングの気がします。観終わった後も心に残る、哀愁に満ちた名曲です。皆さんも機会があったら、昔観た映画をひさびさに観返してみてはいかがでしょう?違った感じ方ができるかもしれませんよ。

BY KAZUAKI YAMAZAKI

山崎一彰

主に特撮系作品、カルト作品の紹介を担当するアラフィフおやじです。ウルトラマンオタクで怪獣とか妖怪とか異形のものに惹かれます。特撮以外ではハラハラ・ドキドキする作品が好きなので、スパイものや冒険ものをよく観ます。中でも007シリーズは全て観ていて、20作目まではDVDをすべて持っています。