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24アワー・パーティー・ピープル

MOVIE 2018.7.9

24アワー・パーティー・ピープル

24 Hour Party People|イギリス映画(2002年)
監督:マイケル・ウィンターボトム
出演:スティーヴ・クーガン、レニー・ジェームズ、パディ・コンシダイン

世界を変えた音楽。歴史の目撃者はたった42人

この映画の予告を観たとき、単純に好きな音楽が流れるお洒落な映画じゃないかって期待し、すぐさま観ることを決めた。しかし、その期待は劇場で上映がはじまるや一瞬で打ち消された。本作、タイトルはサウンドトラックにも収録されているハッピー・マンデーズの曲に由来し、物語はマンチェスターのインディーズレコードレーベル「ファクトリー・レコード」の社長であったトニー・ウィルソンの伝記を基とするなど、とてもキャッチーな手触りだが、実際はスケート映画などで使用する手持ちカメラでシーンを追うドキュメンタリー映画風の荒いタッチの連続。そこで描かれているのは、まさに歴史が生まれる瞬間だ。時は1976年の英国マンチェスター。音楽番組の司会を担うトニーは、ある晩、当時無名だったイングランド出身のパンク・ロックバンド「セックス・ピストルズ (Sex Pistols)」の一夜限りのライブへと向かった。会場に集まった観客はたったの42人。誰もがこのライブに来たことを後悔したが、無名バンドの演奏が始まった途端、トニーは“何かの始まり”を感じる。そしてその衝動をすぐさまレーベルの立ち上げという行動に移す。ハッピー・マンデーズ (Happy Mondays)、ニュー・オーダー (New Order)など著名なアーティストを輩出してきた「ファクトリー・レコード(Factory Records)」だ。ファクトリー・レコードが生んだ音楽、手掛けた大型クラブハウス「ハシエンダ」が、その時代、マンチェスターから発信される伝説を築き上げていった。ただのサクセスストーリーを描いた映画と言ってしまえばそれまでだ。しかも、「ファクトリー」も「ニューオーダー」も知らない人が観たら、面白さは半減するかもしれない。コアなファン層だけにアプローチしてくる描写、選曲。でもそれこそが、音楽好きにはたまらない映画ということに間違いない。特に、レコードスリーブのデザインが面白くなってきた時代を描き、アートワークにカタログ番号を加える斬新なイメージも当時のままに再現。こういったデザイナー心をくすぐるあたりは、本当にコアな層にしか受け入れてもらえない。なぜこの映画について書いたか。それは最近聴いているハードコアバンド「ザ・フィーバー333(THE FEVER 333」」の影響。本作に登場するバンドとは毛色が違うが、バンドミュージックの影響から、ふと思い返したんだ。