1. ホーム
  2. アート
  3. シネマ気分

キックス

MOVIE 2018.12.3

キックス

KICKS|アメリカ映画(2016年)
監督:ジャスティン・ティッピング
出演:ジャキング・ギロリー、クリストファー・メイヤー、クリストファー・ジョーダン・ウォーレス

スニーカーブームの裏側を描いたスラムストーリー

2016年にアメリカで公開されたこの映画に出会ったのは、スニーカー情報を探すべくネットサーフィンをしていた深夜、たまたま行き着いたページにあった映画情報。NBA全盛期のスーパーヒーロー、マイケル・ジョーダンのシグネチャーモデルであるAJ1(エアジョーダン1)とともに映る黒人の少年。そのビジュアルに興味が湧かないわけがない。すぐさま映画本編を探し出し、鑑賞スタート。当時は日本での公開が未定の状態だったから、音声はもちろん英語。字幕なんてあるわけもなく、なんとなくの英語力で挑んだものの、スラングの多さにふわっとした把握が関の山。でも、おもしろかった。深夜のランナーズハイ的なテンションも合わさり、最後までしっかりと鑑賞。ストーリーはというと、スラム街の実態やスニーカーカルチャーを織り交ぜて描かれるロサンゼルスが舞台。主人公は、貧困など最低ともいえる底辺の環境から、最高にクールなスニーカーさえあれば逃れられると信じた15歳の少年。必死にお金を貯め一目ぼれしたスニーカーをゲットするも、目立たない訳がなく、地元のチンピラからすれば絶好のターゲットに。当たり前のようにスニーカーは奪われて、そこから彼の奪還作戦がはじまる。それもスラムらしさが満点。こそっと自宅に忍び込んで取り返すとか、戦って勝ち取るなんて甘っちょろいものではない。悪い奴と仲良くなり、武器を手に入れ、スラム社会で生き抜く術をたった一足のスニーカーのために使いつくす少年の奮闘劇。実際に日本でもNIKEからAIR MAX 95がリリースされた当時は「スニーカー狩り」といわれる社会現象が起きた。たかがスニーカーのために、履いている人間を襲ってまで手に入れる執念。それほどまでにスニーカヘッズを虜にするレアスニーカー。自分自身もスニーカーを愛してやまないから気持ちは分かるが、争いが起きるくらいなら生産数を増やせばいい。スニーカーだけでなく、世の中には見栄と満足のために醜い争いが起きている。ひとつのブームには、幸せの裏側が存在する。そんなことも感じ取れる映画。次は字幕で観よう。(※2018年12月1日にようやく日本でも劇場公開)