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MOVIE 2019.1.21

ALWAYS 三丁目の夕日‘64

日本映画(2012年)
監督:山崎貴
出演:吉岡秀隆、堤真一、堀北真希

新しい時代の到来と、失ったものを描く作品

来年は56年ぶりの東京オリンピックが開催されます。「ALWAYS」シリーズ3作目の「ALWAYS 三丁目の夕日‘64」は、前回の東京オリンピックが開催された1964年の物語。2作目から5年の歳月が経ち、東京オリンピックを機に変化していく東京を舞台に、進学、結婚、失業、死別…と、主人公の茶川竜之介やその周辺にもそれぞれ転機が訪れます。そうした人生の節目に、彼らがそれぞれどのような結論を出していくのかが、この作品のテーマのひとつ。今回の作品では、カラーテレビ、エレキギター、コーラの自動販売機、漫画雑誌などの新しい風物も登場。急速な欧米化が進んでいる様子が見られ、前2作に登場した「古き良き時代」といった面影は消えつつあります。東京オリンピックの頃は、日本中が「豊かな生活」を目指していた高度成長期の頂点でしたが、同時に日本人が「夢見る心」「思いやる心」を失っていった時代だったのではないでしょうか。もう一つ、この作品のキーワードになっているのは「嘘」です。作品中、様々な「嘘」が登場します。『鈴木オート』の家族に嘘をついて恋人と会う六子をはじめ、その恋人・菊池先生の悪いデマ、雑誌社に嘘のファンレターを書く茶川、茶川の父親は嘘で息子を遠ざけ、茶川の息子代わりの淳之介は受験勉強の傍らこっそりと内職を続けている…など。この作品を見ていると「嘘」というのは、けっして悪い使い方だけではなく、相手を思いやる使い方もあるのだなと感動したりもします。そしてラスト、茶川が大きな「嘘」をつきます。自分が父親から受けた「嘘」を、今度は息子代わりの淳之介へ…。それは、時代がどんどん新しく変わっていっても、人の思いやりや人情は変わらないというメッセージのようでもあります。2020年東京オリンピックを迎えるにあたり、前回の東京オリンピックを振り返りつつ、本作の醍醐味である温かみのある人間性に触れてみてはいかがでしょうか。