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MOVIE 2019.3.4

アメリカン・ビューティー

アメリカ映画(1999年)
監督:サム・メンデス
出演:ケヴィン・スペイシー、アネット・ベニング、ミーナ・スヴァーリ

背徳のブラックコメディを中年男になって見直してみた

約20年前のアカデミー賞受賞作「アメリカン・ビューティー」を最近、ひさびさに見直してみました。主人公はシカゴ郊外で妻娘と暮らす四十男・レクター(ケヴィン・スペイシー)。この物語は、中年男の彼が娘の同級生によこしまな気持ちを抱いてしまったことで家庭が崩壊していくというブラックコメディーです。レクターは平凡な家庭の中で自分を抑え、人生をあきらめながら生きています。高級志向の生活を送ることが幸せと信じている妻、親に見てもらえないことでコンプレックスを抱いている娘…そして主人公の彼はそんなごく一般的な家庭の凡庸な夫であり父親。ところがある日、レクターは娘の同級生・アンジェラに恋をしてしまい、そこから大暴走が始まります。アンジェラへの無言電話、勤めていた広告代理店を辞めてファーストフフード店でのバイト、さらに彼は無駄に体を鍛えてマリファナを吸い、車をファイアーバードに買い替え…。笑えて、しかも痛々しいけれど、同じ中年男としてすごくよくわかる展開。改めて見ると感動もさらに深くなっていることに気づきました。娘と同じ歳の女の子に恋をするという背徳的はおそらく自分が失ってしまった「若さ」への憧れなのだと思います。それをきっかけとした暴走も、自分の「若さ」を取り戻そうと足掻いている姿なのではないでしょうか。この作品の中で頻繁に目にするバラの花や赤い色は、まるで現実の生活の中にある「幸せ」を象徴しているかのようです。ところで、レクターがセックスシンボルとして妄想を膨らませ憧れていたアンジェラですが、彼女の美化された女性像があるきっかけで崩れ、彼は現実へと引き戻さます。主人公と同じ中年男として改めてこの映画を見て、自分のことを見直すきっかけになったような気がしました。